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chapter3

LastGuardian

chapter3「Reliance」

レドナ「だいま・・・」

家のドアを恐る恐る開けて玄関に入る。
ちなみに"だいま"というのは、"ただいま"をひねったレドナの独語である。
深い意味はなく、そのとおり"ただいま"を意味する。
すると、玄関奥のドアが開き、エプロン姿の香奈枝が入ってくる。

香奈枝「おかえりなさい、暁ちゃん。
    あら、そちらは?」

玄関に出てくるなり、フィーノの存在に食いついた。
当然といえば当然であるが。

レドナ「あぁ、こっちは―――」
フィーノ「初めまして~。
     レド・・・、暁さんの友達で、フィーノと申します」

ぺこりと頭を下げる。
瞬間、香奈枝が口を開く。

香奈枝「解った、暁ちゃんの彼女ね?」
レドナ「断じて否定する!」

結構笑いながらいう香奈枝。
それに、レドナがやっぱりと想っていた状況から抜け出すべく策をとる。

香奈枝「冗談冗談。
    フィーノちゃんも、ガーディアンとか・・・そこらへんよね?
    そして、家が見つからないから少しの間泊めて欲しくてここに来たってとこ?」
フィーノ「えぇっ!?な、なんで判ったんですか?」
香奈枝「ふふっ、だってさっき暁ちゃんのこと"レドナ"って呼ぼうとしたでしょ?
    それにいろいろとあるのよっ」

香奈枝の恐るべき洞察力。
その力には、明らかに一本取られた。
これはレドナの思ったことであり、実際の親となればこんなことは朝飯前なのかもしれない。
しかし、用件まで言い当てるのは至難の業である。
どこか香澄と似ているな、とレドナは思った。

レドナ「べ、別に騙すわけじゃなかったんだけど・・・」
香奈枝「あら、私ダメって言ったかしら?」

指で口元を押さえて、天上を見上げる。
思い出すふりをしているのだが、明らかに今の会話の中ではダメという単語は出てきていない。

香奈枝「ほら、暁ちゃんもフィーノちゃんもはやく上がりなさいな。
    夕食も3人分全部あるからね」

そういって、玄関に佇む2人を急かした。

フィーノ「ありがとうございますっ、お母様!!」

喜んで、フィーノは香奈枝に頭を下げた。

レドナ「部屋とかは親父んとこが開いてたよな?
    そこに連れてくよ」
香奈枝「あら、一緒の部屋じゃなくていいの?」
レドナ「いいっ!!」

冗談のくせに冗談に聞こえない香奈枝の問いを全面的に否定して、2階へと足を運んだ。
2階は部屋が2つしかない。
レドナがいる部屋と、昔いたらしい父親の部屋とだ。
"らしい"というのは、レドナが実際に会ったことが無いからだ。
無論、香奈枝とレドナは親子同然であるが、血は一切繋がっていない。
鳳覇 暁も偽名であり、本名はレドナ・ジェネシックである。
ここで、少しレドナの過去、香奈枝との出会いについて解説をしておく。

数十年前、上田 香奈枝と、鳳覇 啓作は結婚し、鳳覇家を築いた。
1年後、子供が生まれ、その子には鳳覇 暁という名前が付けられた。
それから、3人は誰もがあこがれるような幸せな家庭でいた。
ある日、啓作と暁は10歳の誕生日に、最近出来たテーマパークに行くこととなった。
あいにく、香奈枝は仕事の都合上一緒に出向くことは出来なかった。
悲劇はここで起きた。
テーマパークに行くバスが、強盗の乗ったトラックと激突。
バスは思いっきり道をはずれ、神下川に叩き落された。
無論、中に居た人間は全員死亡。
強盗はその後、直ぐに裁判で死刑判決が出た。
そのニュースを、夕食を作りながら見た香奈枝は、涙が止まらなかった。
泣きじゃくっても、こらえきれない悲しみ。
憎んでも、やりばのない怒り。
翌日、香奈枝は、神下橋から、川に飛び込み、自殺を図ろうとした。

香奈枝「今、私もそっちにいくわね・・・・」

そして、橋の手すりから、身を投げ出した。
しかし、香奈枝は死ななかった。
誰かに抱かれているような感じとともに、目を覚ました。

???「何やってるんですか、あなたは!」
香奈枝「え・・・・?」

恐る恐る目を見開くと、そこには暁と似た、赤い目を持ち、黒い髪をした少年が居た。
年は、12歳くらい、暁とどこか違うのは年の差のせいぐらいだろう。
どうやら、地面にぶつかる寸前に、受け止められたらしい。

???「簡単に命なんて、投げ出そうとしないでください!」
香奈枝「君にはわからないでしょ!?私の気持ちが!!」
???「推測はつきます!昨日の事故で、家族を失ったんでしょう!!」

突然、雨が降り出してきた。
しかも、大粒の大雨だ。

香奈枝「だったらどうなの!?私はここで死んで、2人の所に行くのよ!!
    君も事故で誰かを失ったの!?違うでしょ・・・・・っ!!!」

泣きじゃくって香奈枝は、その少年に話しかけた。
しかし、あるものが目に入って、自分の発言を酷く後悔した。
少年の後ろには、花束があった。

???「俺だって、昨日ここで友人を失いました・・・。
    だから、今ここに供え物をしに来たんです」
香奈枝「!!」

再び、雨が一層強まった。
雷も鳴っている。
しかし、2人の泣き叫びながらの会話は互いの耳にはっきりと届いた。

???「事故で大切な人が死んだ時の悲しみは痛いほど解ります・・・・。
    でも、だからと言って死んでいいわけないでしょ!?」

もっともの意見だった。
どんなに辛い過去を見たとしても、死んでもいいという権利は何処にもない。
違う、と言いたいが、反論できない。

???「普通・・・そういうのって、代わりに強く生きるべきなんじゃないんですか?
    死んでも、ずっと見守ってあげるのが使命なんじゃないんですか!?」

少年の目にたまった涙が溢れ出した。
その涙は、少年の頬を伝って、香奈枝の手に落ちた。

???「死ぬってことは、そこで全てを終らせるんです・・・。
    意図的に自ら命を断つのは、人生にリタイアしたのと同じことです!!
    死んでいった2人は、あなたがリタイアするのを望むと思いますか!?」
香奈枝「・・・・・うっ・・・・ん・・・・!!!」

香奈枝は、顔をくしゃくしゃにして、少年にしがみ付いて泣いた。
それを、優しく抱いて少年は呟いた。

???「違いますよね・・・なら、ゴールまで2人を背負って歩いていくべきですよ・・・」


香奈枝「・・・・ありがとう」

目に一杯涙を浮かべ、長い沈黙を置いて、香奈枝は呟いた。

そして、彼が親の居ない子だとしり、香奈枝は本当の子のように育てた。
ある意味で命の恩人である少年の本名を知ったのは同居生活半年後のことだった。
彼の本名はレドナ・ジェネシック。
表社会ではおかしな名前なので、大抵鳳覇 暁の名を使う。
この街に来た理由も全て香奈枝は把握している。
多少驚きはしたものの、差別なく普通の子として育てている現状だ。


元父の部屋に着いたフィーノとレドナは、部屋の片付けもなくことを終えた。
普通、掃除をするのが一般的だが、誰も使用していない部屋とは思えない輝きを持っていた。
掃除をしている時に、たとえ未使用の部屋であっても掃除するのが鳳覇家。
その家法を知らずとも、レドナは育ててくれたお礼として2日に1度掃除している。
香奈枝もそのことは知っているが、あえて何も言わなかった。

レドナ「ベットとかは、飯食った後にでも持ってくる。
    俺は隣の部屋で着替えてるから、用があったら呼んでくれ」
フィーノ「了解です、レドナさん!」

そういって、レドナは部屋からでて、右に歩いて2歩の自室へと戻った。
中3の男子とは思えないほど綺麗に片付いている。
厳しくしつけられたわけでもなく、本人が汚いのは嫌だからという理由だ。
しかし、何か物足りない気がするのも事実だ。
大抵、漫画やゲームなどが置かれているものである。
だが、レドナの部屋はテレビが1台、ベットに、机の上には教科書が綺麗に並んでいる。
それと忘れてはならないレドナお気に入りのワインカラーの携帯電話も置かれてある。

部屋主である、レドナは、思いっきりベッドにダイブした。
無駄に天井を眺め、今日一日を振り返る。
そういった行動に他人は見えるが、本人の意図はそうではない。
ゆっくり休んで、魔力を回復しているのである。

高次元の技、ようするに現代においては全くもって信じられない力にも底はある。
使用者の魔力が多ければ、問題ない。
しかし、レドナは魔力云々の戦闘より、大剣を扱う接近戦、肉弾戦向きだ。
魔力も、防御魔法と拘束魔法程度しか把握していない。
(といって、それ以外の魔法の効力を知らないわけでもない)
そのようなレドナには魔力消費が激しく、限界に直ぐに着てしまう。

それに、魔力が減ると身体にも影響がでる。
手足の先端部分が冷たくなったり、無駄に寒気がしたりする。
よって、少しでも空き時間があれば、次の戦闘の魔力チャージに費やす。

ベッドに横たわって数分、だんだん魔力も回復してきて安全ラインを越えた。
そんな時、部屋のドアがノックされた。

フィーノ「レドナさ~ん、夕飯できましたよ~」
レドナ「おう、今行く」

結局、着替えも済んでいないことに気づき、レドナは急いで私服へと着替える。
その間20秒。
ベッドの上に制服を投げ捨てたが、後で綺麗にたたむつもりで、レドナは1階の居間へと降りた。

ドアを開けると、鼻になんとも良い香りが届いた。
居間のテーブルには、いつもより1つ分皿が多くのせられていた。

香奈枝「今日はフィーノちゃんが来たからね。
    追加でスパゲッティ作ったわよ」

鼻歌交じりに、香奈枝がテーブルにスパゲッティの盛った皿を置いた。
後に、フィーノがサラダを盛った皿を持ってきた。
妙に違和感を感じない2人にレドナは少々不安を感じた。

レドナは、席に着く前に、テレビの電源を入れニュース番組のチャンネルを入れた。
趣味や、ニュースを見たいというではない。
ただ、ニュースで、時たまシュナイガー云々についての報道がでる。
たとえば、怪奇現象が勃発していることや、剣か何かでの痕跡が残っていたりと。
そのおかげで、レドナも4、5回事件を解決させたことがある。
特に気になる情報は、ビデオに録画し、大まかな作戦をたてたりもする。

そして、レドナは席に着き、夕食を食べはじめた。
主に、会話内容はフィーノについてだった。
当然といえば当然だが、とりあえず一つ屋根の下で暮らす存在は把握しておかねばならない。

そんな中、レドナの心臓を高鳴らせる報道が流れた。
題にはこう書かれてある。
『神下神社の敷地内に謎の紋章現る』
その題の上に、赤い紋章が映されていた。
しかし、レドナの目には明らかにそれが魔法陣であることが理解できた。
とっさに、席から離れレドナの手がビデオデッキの録画の部分を押した。

フィーノ「こ、これって、召喚型魔法陣!?」

画面が目に入ったフィーノが声を上げる。

レドナ「たぶんな、ちょっと音量上げるよ」

そういって、リモコンを操作し、音量を2上げた。
ニュースの内容はこうだった。
神下市にある、神社"神下神社"。
そこで、お参りに来た老夫婦が地面が抉られているのを発見。
警察が現場に駆けつけたところ、子供いたずらの可能性が高いと見ている。
しかし、傷跡が赤いことから、高度な技術ではないとできないことが判明。
それに、書かれていた場所は石でできていたので、深く掘ることも難しい。
管理人は、朝掃除に来た時はなかった、として犯行時間は昼であることが高い。

香奈枝「これも、あの・・・ほらシュなんとかの仕業かしら?」
レドナ「たぶん、いや高確率で。
    夜中下見に行ってすぐに破壊する」

ニュース番組が終り、録画を停止させ、レドナは再び席に着いた。
そして、話題が一気にさっきの事件へと移行した。

レドナ「召喚型となるとやっかいだ、変な怪物がうろつく可能性が高くなる。
    となると、アレの要請が必要かな」
フィーノ「あ、マプティラズディですね?」
香奈枝「まぷてぃらずでぃ?」
レドナ「Magic dollision,Perception time,Instan large area,Battle zone automatic deployment,Equipment.の略。
    魔力衝突感知時瞬時広範囲戦闘区域自動展開装置。
    超簡単に言うと、戦闘がはじまったらそれが勝手に戦闘区域を張ってくれるってわけ」

長々とした英語を一回もかまずに、なお知らない単語でも正確だと思える発音で説明する。

フィーノ「一般の敵なら、正体を人に明かさないために、地球から一時孤立させる戦闘区域を張るんです。
     でも、怪物とかにはその知識が全くないんですよ」
レドナ「ま、例外で不意打ちかけるために、張らずに襲い掛かる人方もいるけどな」

丁寧に、フィーノが香奈枝に教える。

香奈枝「でも、それって暁ちゃんたちは張れないの?」
レドナ「最低限のものなら張れるけど・・・。
    物理戦闘系の俺ならすぐに魔力に底が来るから、バレるまえに倒す」
フィーノ「その点で、私は魔道戦闘系ですので、戦闘区域の展開は楽勝ですよっ」

レドナの欠点をカバーできる喜びか、フィーノが嬉しそうに言う。

レドナ「けど、相手は人間を食って生きようとする輩だからな。
    俺たちが知らないところで行われると、張れても意味がない」
香奈枝「向こうは、そうとう時代が進歩してるのねぇ」

感心したように香奈枝が言う。
完全な理解はしていないが、おおよそは掴めているようだ。

フィーノ「要請するんでしたら私が明日の昼に行って来ますよ~。
     ・・・・ぁ、でもここのアスティックゾーンは・・・」
レドナ「残念だが、AZは無い、隣のスービテリトリーにならある。
    それに、マプティラズディの設置も容易なもんじゃないし」

考え込むように、レドナが言った。
アスティックゾーンとは、この世界と、レドナ達の世界とを繋ぐ場所だ。
限られたテリトリーにしか存在せず、行き来も自由ではない。
今は、その場所は深く関係しないので、改めて説明しよう。

レドナ「マプティラズディを設置するなら、それを防衛する必要もある。
    いくら結界で外部から見えずとしても、奴等の魔力感知力は伊達じゃない」
フィーノ「さ、さすがに2人での防衛は厳しいですね・・・」
香奈枝「その装置、学校に配置するようにしたらどう?
    学校なら、暁ちゃんならほぼ毎日居るから防衛できはしないかしら?」

香奈枝が、意見を述べた。
たしかに、もっともな意見だが、それに対し、レドナはこう答えた。

レドナ「たしかに、その線はいいと思ったが・・・。
    でも、その分学校の生徒達を危険にさらす羽目になる、できるかぎり関与は避けたい」
香奈枝「そういえば、そうだったわね・・・」

再び、沈黙が続く。
配置するかどうか。
それと、配置するとして、何処に置くか。
どちらも、メリットデメリット両方とも持っている。

この沈黙を破ったのは、意外にもレドナだった。

レドナ「今考えてもしゃーない。
    温かいうちに飯食おうぜ」

そういって、レドナはフォークを動かして、スパゲッティを絡ませた。

香奈枝「そうね、とりあえず、今は保留ということで」
フィーノ「はいっ」

そして、皆も同じく、夕食に取り付いた。
その後、何の問題もなく、その日は終わりを迎えようとしていた。
そんな中、レドナは魔法陣の偵察、及び破壊のために準備をしていた。
出発は、11時。
今からちょうど30分後である。

フィーノ「あれ、レドナさん偵察行くのに、なんで勉強道具を?」

準備に鞄の中に教科書等を入れ込んでいるレドナを見て、フィーノが尋ねた。

レドナ「ここいらは役員のパトロールが稀にあるからな。
    塾帰りの受験合格のためのお参りという設定で行くのさ」
香奈枝「ふふっ、さすが確りしてるわね」

レドナの説明に、香奈枝が嬉しそうに言う。
実の息子と等しい存在である、頭がいいのは自慢にすることが可能だ。
そのことに対しても、香奈枝は嬉しそうにしているのだろう。


PM10:58。
夏の癖に、この時間帯になると辺りは冷え込み、暗くなる。
その闇の中、神下神社に、2人の存在が居た。
1人は高1ぐらいの赤いツインテールの髪をもつ少女。
もう1人は、中1ぐらいのややブロンズがかった髪をもつ少年。
2人とも、先ほどニュースで報道された魔法陣の前に立っている。

???「なぁ、姉貴。
    たぶん、ソーサラーの仕業だとおもうけど」
???「わからないわよ?
    もしかしたら、"あいつ"の作戦かもしれないし」

魔法陣の前で、少女は腕を組み考え始めた。

???「でも、あいつがやるにしては召喚系は覚えるわけないし・・・。
    やっぱ、ソーサラー・・・かな?」
???「エクステンドに入って、新しく覚えたとかは?」

かがんで、魔法陣に触れながら少年が言う。

???「ないない、とりあえず、厄介だから壊しておこっか」

少女の右手が光り、次の瞬間右手に蒼白の大剣が握られた。
その剣は、グリュンヒルに酷似しているどころか、グリュンヒルの色違いだった。
少年は、うんと頷いて、その行動を促した。

確認すると、少女は蒼白のグリュンヒルの刃を魔法陣に叩き込んだ。
魔法陣を含む地面に亀裂が入り、魔法陣の形状が歪んだ。
そして、魔法陣がゆっくりと消えていった。

設置型魔法陣は、その描かれている場所を壊すことによって消滅する。
壊すに至らなくても、大きな亀裂等でも同効果がでる。

???「ふぅ、終りっと」
???「はやく逃げよう、なにか魔力反応が近づいて着てる」
???「そうね、じゃ、さっさと御暇しましょか」

そういって、2人は転送魔法陣を展開し、消えて行った。

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